宮崎駿「風立ちぬ」批判を振り返る2

2013年の、「風立ちぬ」公開時の批判を振り返るシリーズの第2弾です
前回は週刊プレイボーイに掲載された韓国メディアの記者による「風立ちぬ」批判を取り上げました
記事では、「韓国で物議を醸した『風立ちぬ』の戦争美化論争は、宮崎映画を愛する韓国人の、不器用すぎるリスペクトの証あかしだった?」とまとめてはいるものの、全体として何を言いたいのやらと思ってしまう内容でした
批判と形容するより、「子供向けの幻想的な御噺を期待してたのに、何だよこれは!」という恨み節でしょう
なぜか韓国メディアの記者は宮崎駿を、「自然大好きなやさしいオジサン」と思い込み、「千と千尋」の後日談みたいな物語を勝手に期待していたわけです。まあ、日本のアニメファンなら宮崎駿が戦闘機オタクであると知っていますので、「風立ちぬ」を見ても驚いたりはしませんし、「おお、宮さん。ついにやりたい放題だな」と思っただけなのですが
前置きが長くなりました。今回は「風立ちぬ」公開後の、中国の批判を取り上げます
元ネタは中国の新聞記事を日本語に翻訳し紹介してくれる「有縁ネット=中国と日本=あれやこれや」さんの掲載記事です。残念ながら2017年で更新がストップしている状態であり、記事を転載させていただく許可を得られそうにないので勝手に引用します
「風立ちぬ」を鑑賞した一般的な中国の方の率直な感想が読み取れます


宮崎駿の映画《風立ちぬ》 : 幻想的なものではなかった (下)
批判論:宮崎監督 あなたはおかしくなったのではないか?
申しわけないが、私も 宮崎ファンの 1人だけれど、しかし、私は監督作品の 全作品をなんでも受け入れるわけではない。 今日、映画館を出る時、私は 周囲の多くの日本の観客と同様、失望を隠せなかった。
誇張でなく 《風立ちぬ》は、私が見た宮崎駿監督の映画の中で最もつまらない作品だった。 “宮崎監督、あなたは本当にぼけ老人になったんじゃないですか?” と聞かずにいられなかった。
映画の最初の場面、なんだかさっぱりわからなかった―――一体この映画は誰に見せようと撮ったのか? みんなが知っている 宮崎駿監督の映画は、これまでずっと画面は明るくきれいで美しく、ストーリーは 子供心に満ちていて老若男女に関わらず、全世界に知られていた。
しかし、この映画はどのように見ても、子供の作品ではない――オープニングから 10分ぐらいの 二郎の少年時代を除いて、映画の90%はすべて彼の成長後の物語である。関東大震災、金融危機、伝染病流行、戦争、職場闘争、結婚、ベッドシーン(明かりを消してカット処理したが)、こんなに 多くの大人の要素が一堂に会していた。
宮崎監督も以前、計画段階から子供達が見ても分からないことを心配していた。でもジブリスタッフは、“子供達は見て分からないとしても、見にくるべきです。 いつかわかるようになると思います” と 言っていた。
またこの映画は、うっとうしい部分がありすぎる。職場の雑務に、海外視察、モデル機の試験飛行などなど。 
こんなマニアックな内容はつまらないし、無味乾燥だ。 想像力もないし、見せ場もない、クライマックスもない。それに人の心を奮い立たせるような音楽もない! 
私がガマンして見続けたのに、私の隣のおじさんとおばさんはとっくに眠っていた。
(中略)
また、この映画の恋愛ストーリーについて話そう。もしもこの話がなかったら、私は恐らく途中で席を立ったと思います。菜穂子というこの大金持ちの病気の 美少女が、私の目を引きつけました。
でも、彼女と 二郎の物語はどう見てもわかりにくい ――それは当然です。なぜかというと現実の 2人のモデルはまったく関係ないからです!宮崎監督は、まったく 別の二人を ムリヤリ夫婦に したのですから、この ストーリーはこじつけなのです。 
二郎が 関東大震災の時、助けた女の子が、なんで10年後、二郎のことを思い出したんでしょう?大金持ちのお嬢さんが貧乏人の男に告白なんかしますか?
最後にまた、紅旗の下に育った中国人として受け入れることができないことを言います――監督は、戦争とゼロ戦に対して態度があいまいです。 ゼロ戦て、何ですか? たとえ軍事オタクでなくても、普通の中国の観客は 強い 印象を持っています。ゼロ戦は、抗日ドラマにもよく出てきます。 外形は大きい鳥のようで、翼の上に日本のシンボルの日の丸が描かれた戦闘機です。しかも、ゼロ戦は、第二次世界大戦で 悪名高い神風特攻隊の定番の飛行機でした。この飛行機で軍艦にぶつかったのです。
とても恐ろしく暴力的な、典型的な人間爆弾飛行機なのです。ある意味ゼロ戦の 残虐な行為が、日本の 軍国主義の滅亡を加速したとも言えます。そして、それが間接的に広島、長崎の原爆で、数十万の人々の死傷者を招いたのです。
しかし、映画の中で、二郎の同僚が重要なせりふを言っています。 “私達はいい飛行機を設計すればいい、戦争の事は関係ない” この“戦争の事は関係ない”という言葉に、私は気分が悪くなりました。
(中略)
試写会の後、ある評論家が、“これは明治維新以来、西洋を追いかけ、懸命に富国強兵を行ったが、その結果、国は衰え、次々と欠点が出てきたお話だ” と語っていた。 
映画の最後で二郎は独り、至る所、飛行機の 残骸の残った荒野の上を歩いていく。夕日の下、見渡す限り 残骸の山である。傍らに、ずっと傍観者的 形で出ていたカプロー二伯爵が “あなたのゼロ戦が、この国(日本)をダメにしたんだ” という。場内の多くの観客からは、開始から終わりまで一回も笑い声、ため息、罵倒の声も出なかった。あったのは沈黙、沈黙、沈黙だけだった。


いまさら語るまでもないのですが、「風立ちぬ」は宮崎駿の最高傑作であり、到達点であると自分は思っています。ストーリーが途中で破綻してしまっている「ハウルの動く城」より鑑賞しやすい作品でしょう
上記のような感想を抱く中国の観客がいたとして、それを責める気にはなれません。堀辰雄のいくつかの小説を読んでいないのでしょうし、素養を欠いたままでは「風立ちぬ」を理解できないのは当然です。加えて中国の社会主義歴史観でどっぷり洗脳されているのですから、真にお気の毒と言うしかありません
中国や韓国に生まれるのではなく、自由の国である日本に育ち、堀辰雄を読んで、宮崎駿の「風立ちぬ」を共感と感慨をもって楽しめる人生…を手にした自分は幸せだと感じます
歪んだ歴史観に毒され、知性と教養を欠いた彼の国の人たちの感性の乏しさ、想像力の欠如、心の貧しさを見るにつけ、しみじみとそう思うのです。日本人でよかった
科学的社会主義建設に邁進し、世界第2位の経済大国にまで成長した中国が、コロナウィルスの蔓延に手を焼き、危機に瀕しています。習近平の推し進めた国造りがどこで間違ったのか、共産党の指導者たちは胸に手を当てて反省すべきでしょう。絶対的に正しいはずの政治路線が、とんでもない間違いであったと認める勇気があるのかどうか?

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