神戸5人殺傷事件を考える 初公判は10月13日

2017年7月、神戸市北区で祖父母ら3人を殺害し、実母ら2人に重傷を負わせたとして逮捕されていた竹島叶実被告の初公判が、今年の10月13日に始まると報じられました。公判の予定を見ると、11月4日が判決言い渡しとなっています
事件から足かけ4年でようやく公判開始です。竹島被告については2度精神鑑定が実施され、その上で刑事責任能力ありと判断し起訴に至ったものの、公判が開けないのではないかと思うくらい間が空いてしまいました。何があったのかは不明です
事件直後、ほとんど現行犯逮捕のような形で身柄を抑えたのであり、犯行そのものを否認していたわけでもなく、容疑を固めるのが難しかったとは思えません
さて、この神戸5人殺傷事件も、その後2020年に起きたボーガンによる宝塚の家族3人殺害事件も、報道がほとんどないため取り上げにくいケースです
今回は刑事事件への言及も多い、新潟青陵大学の碓井真史教授の書いた記事を取り上げます(記事の日付は2017年7月です)


神戸5人殺傷事件から考える親殺し、無差別大量殺人の心理学
(前略)
■無差別大量殺人
今回は親や祖父母への恨みではなく、「誰でも良かった」と供述していると報道されています。
一般に、「誰でもいいから殺したかった」と語る大量殺人者は、孤独と絶望感に押しつぶされた犯罪者であることが多いでしょう。彼らは、逮捕されることや死刑にされることも、犯行時には恐れていないこともあります。自分の人生も終わりにしたいが、こんな世界も終わりにしたいと思ったりもします。あるいは、自分をバカにしてきた世の中への最後の復讐であり、自分の力を見せつけたいと考える者もいます。
誰でも良いからことしたかったと感じて、一番身近にいて殺しやすかった母親を殺害した少年もいました。ただし、この少年は母親一人を殺害しています。
犯人の中には、一人を殺害し大量の血を見たことで興奮し、さらに無差別な殺人へと向かう者もいます。これを、血の酩酊と言います。
無差別大量殺人は、無差別とは言え、女性や高齢者がターゲットにされやすくなります。素早く逃げられたり、反撃の可能性が高い人を避ける気持ちは、あるようです。
■優等生いきなり型(挫折型)犯罪
昔から小さな犯罪を重ねてきて、とうとう大きな犯罪を犯す人がいます。一方、優等生で非行歴もないような人がいきなり大きな犯罪を起こすこともあります。大きく報道される猟奇事件などは、むしろこちらの方が多いでしょう。
優等生の中には、不平不満を我慢し続け、どこかで爆発する人もいます。
また、人生のあるところまでは優等生だったのに、大きく挫折して立ち直れない人もいます。彼らは、「こんなはずではなかった」という思いを持ち、社会を強く恨むことがあります。
■無職青年、引きこもり犯罪
無職青年が起こす様々な犯罪は、社会問題の一つです。さらに、引きこもり状態の人が大きな犯罪を起こしてきたことも、これまで報道されてきました。
決して、引きこもり状態の人がみんな危険なわけではありません。ただ引きこもり状態が続く中で、精神のバランスを崩し、現実感覚を失っていくケースはあるでしょう。
■犯罪防止のために
このような犯罪者は、自分の利益を考える一般の犯罪者とは動機が異なります。自暴自棄になってしまえば、厳しい刑罰の存在も犯行のブレーキにはなりにくいでしょう。彼らが抱えている孤独と絶望感の癒しが、犯行防止には必要です。
学校にも職場にも所属せず、社会とのつながりがない状態は、苦しいことでしょう。親も、小さな子どもの不登校などは周囲に言えても、大人の引きこもりになるとなかなか相談などできません。いつかは立ち直ると期待しつつ、時間ばかりが過ぎて行きます。
孤独と絶望を癒し、本人に絆と希望を取り戻すためには、その家族の支援が欠かせません。防犯のためにも、困っている家族を社会が支援して行かなければなりません。
行政も、民間団体も、大人になった子ども孫の問題で悩んでいる家族の相談にのっています。まず、家族が誰かとつながる必要があるのではないでしょうか。


先述のように事件からまもない時期に書かれた記事であり、竹島叶実被告に関する情報がメディアに出回っていたわけでもなく、一般論という形で言及しているものです
なので、事件固有の事情や状況を十分に斟酌し、検討しているわけではありません
ただ、事件の類型のように「■優等生いきなり型(挫折型)犯罪」としているのがひっかかります。以前に書いたように、教育評論家尾木直樹がこの「いきなり型非行」と言い出し、「ある日、突然それまで問題のなかったこどもが非行に走る。これがいきなり型非行、あるいは突然型非行だと私は考える」とテレビ番組の中で説明していました
「成績がよくて素行に問題のないこどもが…」と言いたいのでしょうが、そもそも成績が良いこども=よいこ=問題のないこども、という考え方自体がおかしいのです。当ブログでも繰り返し書いてきたように、成績が良いという部分ばかり注目し、それ以外の部分を見ていない(特徴や人格傾向をつかめていない)から、こんなおかしな類型に当てはめようとするのでしょう
成績が良くても発達障害を抱えているこどもはいるわけですし、学校では素行に問題がなくても自宅で犬や猫を殺しているこどももいます。こどもの全体像を把握できていないがゆえに、「見た目は問題のないこども」と決めつけてしまっているだけなのです
詳細に調べれば、学校内外、家庭でさまざまな問題行動が目撃されていた、というケースが少なくないのです
神戸の連続児童殺傷事件のように、小学生の頃から猫を殺すなど問題行動がありながらも、表面上は「普通のこども」とされ、「ある日突然、凶悪な事件を起こした」かのように語られるわけで、自分はこの「■優等生いきなり型(挫折型)犯罪」という類型には賛成できません
さらい言うと、神戸連続児童殺傷事件では何かの挫折が犯行のトリガーになっていたわけではないのであり、挫折型犯罪という括りにも該当しないのです
本件の話に戻って、竹島叶実被告の情報が乏しいため、彼が挫折をしたのか、あるいは別種のトラブルがあったのか、病気だったのか、把握できないのであり、検察の起訴状朗読の中で明かされるのを期待します

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