冤罪確定事件でも「被告が殺人犯」と言いはる滋賀県警

2003年、滋賀県の湖東記念病院で男性の入院患者(植物人間状態)が死亡した際、病院に勤務していた看護助手西山美香さんが呼吸器を故意に外したとして殺人の容疑で逮捕・起訴され、有罪が確定して和歌山刑務所に服役していました。12年間服役し、満期出所した西山さんは再審を請求、長い裁判を経て無罪判決を勝ち取り、国と滋賀県を相手取って損害賠償請求の訴訟を起こしています
しかし、滋賀県警は頑なに当時の捜査に誤りはなかったと主張し、「被害者を心肺停止状態に陥らせたのは原告(西山さん)だ」と主張する準備書面を提出した、と報じられています(訴訟の相手方は滋賀県警を所管する滋賀県)
再審の結果、冤罪だったと確定したわけですが、それでもなお滋賀県警は西山さんを犯人だと決めつけ争う構えです。これが警察の面子というやつなのでしょうか?
話の順番として、西山さんの再審請求について書いた記事のアドレスを貼り、それから損害賠償請求訴訟を取り上げた記事を貼ります。再審請求に関する記事は長文の記事なので、引用は割愛させてもらいます。取り調べを担当した若い刑事に恋をしたがゆえ、誘導されるままに犯行を自供する調書に署名、捺印してしまったと書かれています。ちなみに西山さんには発達障害と軽度の知的障害がある、とされます。知的障害のある女性を逮捕して勾留し、脅したりなだめたりしながら調書を仕立て、犯人として立件する手口だったのでしょう

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滋賀県、確定無罪判決を否定する主張 国賠求める女性「怒り心頭」
滋賀県の湖東記念病院で2003年に死亡した男性患者への殺人罪で服役後、再審無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(41)が国と県に計約4300万円の国家賠償を求めた訴訟で、県が無罪判決を否定する内容の主張をしていることが分かった。16日に大津地裁であった非公開の手続き後、原告側が会見で明らかにした。
昨年3月の再審の無罪判決は、西山さんの捜査段階の自白について、取り調べた県警の男性刑事が西山さんの恋愛感情などを利用して誘導したと認定。被害者が致死性不整脈で死亡した可能性があり「殺害されたという事件性が証明されていない」と結論づけた。無罪判決は翌月に確定した。
だが、県は、15日に地裁へ提出した準備書面で「取り調べ担当官に好意と信頼を寄せて虚偽の殺害を自白することなど、根本的にあり得ない」とし、捜査の違法性を否定。「被害者を心肺停止状態にさせたのは、原告である」と主張した。
再審の無罪判決で、裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」と説諭したが、「滋賀県警としては、承服し難い」とも反論した。
西山さんは昨年12月、捜査の違法性を明らかにするとして、国賠訴訟を起こした。国は6月、「検事が有罪と認められる嫌疑があると判断したことには十分な理由があり、起訴の判断が合理性を欠くとはいえない」とし、検事の捜査に違法性はなかったとする書面を地裁に提出している。
16日の会見で、西山さんは「県の書面の内容はうそで、怒り心頭だ」と語った。代理人の井戸謙一弁護士は「予想外で大変不当」と強調。県の準備書面について「無罪とした刑事確定判決の判断を正面から否定するもの」「美香さんを再び馬鹿にし、その名誉を甚だしく毀損(きそん)するもの」などとし、県の代理人に撤回を求めたという。
無罪判決をめぐっては、県議会で昨年6月、滝沢依子・県警本部長が代表質問に対し「結果として(西山さんに)大きなご負担をおかけし、大変申し訳ない」と謝罪していた。県警監察官室は取材に対し、準備書面について「個別の案件についてはコメントを差し控える」とした。
(朝日新聞の記事から引用)

滋賀県が訴訟の当事者となっているわけですが、警察の仕事には口出しできません。教育行政が教育委員会に託されて、県の行政から独立しているように、警察の仕事も県の行政から独立しており、県知事といえども警察の仕事には介入できない仕組みになっているからです。それでも滋賀県警の予算は滋賀県の予算に組み込まれていますので、今回のような冤罪で損害賠償を請求された場合、県の予算の予備費から賠償金を支払うことになります。結果として滋賀県民の負担になります
滋賀県知事は冤罪という裁判結果を受け、西山さんに謝罪をしています。が、本来なら滋賀県警の本部長が謝罪するべきでしょう
警察官の不祥事があっても県警本部長が頭を下げるケースは滅多になく、本部長の下の刑事部長が謝罪会見で頭を下げる…というのが警察のやり方です
上記のように、県警本部長が県議会に呼ばれ、議員の前で謝罪を口にする例はありますが
今回のように滋賀県としては西山さんにしかるべき補償をして和解したいと考えても、滋賀県警が強行な姿勢を崩さず「西山が犯人」だと主張するなら、裁判で決着をつけるしかありません。ただ、これは滋賀県警独自の判断ではなく、当然ながら警察庁が指示しているはずです。つまりは「冤罪」との判決を下し、警察の面子を潰した裁判所に対するアテツケでしょう
ただ、刑事裁判と民事裁判はそれぞれ独立している、との考えですから、刑事裁判で冤罪との判決が示されても民事訴訟(国賠訴訟)では逆の判断が示される可能性も皆無ではありません。訴訟の行方を見守りましょう
余談ながら、「記念病院」という名称が全国にあります。これは日本財団や笹川保健財団からの寄付を受けた病院が名称に「記念」を付けたもの、という場合があります。それでない病院もあるわけですが。平たく言うと、「笹川良一記念病院」という意味付けのようです

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